深海
深く黒い海底を進んでいる毎日。
最初のころは「みんなにできることが、私にできないってことはないはずなんだ」と思って頑張った。
仕事も行きたくないと思いながら行った。
今日は良いことがあるかもという希望を持って、無理やり職場に足を向けた。
でも、やっぱり変わらなかった。
深く黒い海底を今日も進んでいる。
前も後ろもない。感覚もない。黒いことすら何も感じない。
おそらく、これまでの生活の中で、ささやかでも楽しめることやうれしいことはあっただろう。
そんなことすら気づけない。
いつまで続くの。
でも本当は分かっていたの。こうなることは分かっていた。
自分だけではどうにもならなかったの。こうするしかなかった。
感覚のない自分と状況を冷静に見ている自分がいる。
やっぱり青い海が見たい。
ある時、偶然にも一つのきっかけを見つけた。
自宅以外に居場所ができた。
時には、居場所に行くことに気持ちが進まないこともある。
それでも、居場所に行ってみると、なぜだかうれしい気分になる。
でも、うれしい気分は続かない。
家に帰るといつの間にか消えちゃう。
また、深く黒い海底が広がっている。
その繰り返し。
そして、今日も深く黒い海底を進んでいる。
ただ以前と一つ違うのは、感覚に触れることができるということ。
本が読みたい。マツコの番組が見たい。ウクレレが弾きたい。居場所に行きたい。
その瞬間は、海の色が少し青く見える。
ささやかでも暖かい感覚を感じられる。