[2024/7/6]
19才。夏。俺は前田敦子と結婚するつもりでいた…。
前田敦子って、あの前田敦子ね。元AKB48。通称・あっちゃん。
彼女主演のテレビドラマを見てからというもの、僕はあっちゃんに首ったけだったのだ。
そして、19才の僕は決意する。「前田敦子をお嫁にもらおう」と(ホントにアホ!)
さて、決意したのはいいものの、どうやってその夢を実現させるか。19才の高橋少年は足りない頭を使って考え始めた。
まず、何はさておき、彼女と出会わなければならない。お話はそれからである。がしかし、彼女はテレビの中の人。普通にコンビニで働いてたら、客として前田敦子がやって来る……な~んてラブコメ展開は99.999%ありえない。となると、おのずと答えは見えてくる。
「俺もゲーノー人にならなくては!」(ホントにホントにアホ!)
こうして19才、夏の大冒険が始まったのである。
※※※
僕はバンドをやろうと思った。バンドで一旗あげてやろう、と。そうすれば前田敦子に会えるチャンスも出てくるだろうし、何よりロックが好きだったから。
それに、バンドをやれば、ひっくり返せると思った。いじめられた事、学校やめた事、友達がいない事、女の子と話せない事。全部全部ひっくり返せると思った。
僕は逆転満塁サヨナラホームランが打ちたかった。
前田敦子への第一歩として、「バンド結成」という目標ができたのはいいけど、ここで最初の壁にぶつかる。
「バンドメンバーはおろか、友達一人もいない問題」
当時、僕は完全なる引きこもり。友達ゼロ。孤立無援。携帯電話は持ってたけれど、電話帳には「お父さん」「お母さん」「自宅」の3つだけ。そんな状態。
ネットを使うしかなかった。ネットのバンドメンバー募集掲示板。当時、OURSOUNDS(アワーサウンズ)という掲示板があって(今もあるが)、そこにメンバー募集を書き込むことにした。
”初心者歓迎!当方、歌もギターも下手っぴですが、一緒にやってくれるメンバー募集!オリジナル曲やりたし”
本当にこんなんでメンバーは集まるのだろうか。半信半疑。ドキドキしながら待った。
一週間後、一件のメールが入った。「はじめまして。私も初心者です。ドラムを叩いている19才女です。もしよかったら一緒にやりたいです」
さらに数日後、またメールが入った。「ロックンロールが大好きな18才男です。ギターをやっています。一緒にやりませんか?」
僕は震えた。ワナワナと震えた。
つづく…。