[2024/12/28]
『まぶた閉じて浮かべているよ』
2024年12月15日。
僕はこの日のことを一生忘れないだろう。
うじうじのマニアックな読者(通称・うじラー)の皆さんなら覚えているだろうか?
そうです。握手会です。アイドルの握手会。日向坂46というアイドルグループの松田好花(まつだこのか)ちゃんに生で会ってきたんです。
応募券のついたCDを1万円分買い、抽選に参加。見事、当選したあの話です。
12月15日。待ちに待ったこの日がやってきた。珍しく寝覚めの良い日曜日。本日は晴天ナリ。バッチグーだ。オーライだ。文句ねー。
握手会。僕の順番は夕方からだったんだけど、観光もしたかったんで、午前中には家を出た。
会場は東京ビッグサイト。JRで新橋駅まで行き、ゆりかもめに乗り換え、豊洲方面へ向かう。パニック障害の影響で電車が苦手なので、頓服の精神安定剤で誤魔化しながら。
まずは腹ごしらえ。豊洲といったら海鮮でしょ。
最初からウニを食べてやろうと決めていた。ウニ丼。6600円。正直ひるんだ。んだけど、俺はこれから松田好花ちゃんに会うんだ。これくらいやらないと。景気づけだ。
味は……しなかった(笑)。いや~、6600円という見たことのない値段に圧倒されちゃってね。恐れおののいちゃって、味がわかんなかった。あ、でも、醤油が美味かった。あれは良い醤油を使ってるよ。たぶん。
昼食後はお台場に向かい、フジテレビ見学をしたりして時間をつぶした。人が多い。正直、疲れた。早く埼玉に帰りたかった。
でも、そこを何とか踏ん張り、ついに東京ビッグサイトに向かった。到着してビックリ。人、人、人だ。それに会場がでっかくて、どこに向かっていいのかわからない。係員に聞こうかとも思ったが、「コイツ、アイドルの握手会に来てやがる。どうせ彼女いないんだろうな」とか思われるのが嫌で聞けなかった。ここまで来ると、自意識過剰を通り越して、自意識異常である。
その後、何とか自力で会場にたどり着き、列に並ぶ。ほとんどが男性ファンなんだけど、女性のファンもいる。受付作業を済まし、ついに「その時」がやってきた。
松田「こんにちは~」
高橋「こ、こ、こここ、こんにちはっ!」
目の前に松田好花ちゃんがいる。幻じゃない。モノホンだ。テレビの中の人が目の前にいる不思議。感動。松田好花ちゃんと目が合った、その瞬間、僕の頭の中は真っ白になった。そして、出てきた言葉が……
「言葉にできない!!」
お前は小田和正か!っていうツッコミを入れたくなった読者の皆さん、許してやってほしい。彼の思考は完全に停止していたのだ。なんも言えねー。北島康介状態である。
んがしかし、彼は頑張った。彼なりに精一杯の思いの丈を絞り出した。ずっと言いたかったこと。言ってもらいたかったこと。
高橋「た、た、高橋くん頑張って、って言ってください!!」
松田「高橋くん?」
高橋「は、はい!お願いします!!」
松田「高橋くん頑張って♥」
高橋「ふぁ、あ、ありが……」係員「お時間でーす」
14秒の夢は終わった。
※※※
帰りの電車の中、俺の隣でカップルがイチャついてら。俺は耳を澄ます。決して盗み聞きしているわけじゃない。耳を澄ましているだけだ。
彼女「ねぇ~、あたし疲れちゃったぁ~ん♥」
彼氏「ん?疲れた?ごめんね♥(頭ポンポン)」
おーーーーい!!頭ポンポンって。お前、ラブコメ映画の見すぎだろーーーー!!
だんだんと腹が立ってきた(笑)。その後も耳を澄ます。すると、二人の会話に頻繁に「じも」という言葉が使われていることに気づく。
「じも?なんぞや?」と思っていると、どうやら「じも」というのは「地元」の略らしい。これにも腹が立ってきてね(笑)
地元を略すんじゃない!お前らに地元を略す権利はない!俺が認めん!断固反対する!
……そんな帰り道でした。
※※※
家に帰り、今日という日を振り返る。必死に焼きつけた松田好花ちゃんの顔をまぶたの裏に映してみる。だけど、なんか、ぼんやり。
さっきまで覚えていた、松田好花ちゃんの輪郭や肌の質感が毎秒毎秒薄れていく。記憶って切ないね。ヤなことはいつまでも覚えているくせにさ。
ま、でも、これでいいと思うよ。やることはやった。その時の精一杯は出した。そんで、思い出になった。それでいいじゃないか。
最後に。素敵な思い出をくれた松田好花ちゃんに。夢と希望とトキメキをくれた松田好花ちゃんに。
「ありがとう」って言いたい。