[2024/3/16]

引きこもりが相席居酒屋に行った話。

今から6年前の23才の夜、僕たちは埼玉県大宮の吉野家にいた。「僕たち」というのは、僕と杉山くん。「杉山くん」というのは当時いた友達で、同い年の男の子。気は優しくて力持ち。ドカベンを絵に描いたような男だった。

僕たちは吉野家で牛丼をかっ食らいながら作戦会議をしていた。「相席居酒屋」という店があって、そこでは女の子との出会いのチャンスがあるらしい。そりゃあ行くっしょ。男なら行くっしょ。漢字の「漢」と書いて「おとこ」って読むっしょ。

あ、軽く説明すると、相席居酒屋っていうのは、見ず知らずの男女が相席する居酒屋ね。

吉野家で腹ごしらえした僕らは勇気を出して相席屋に突入した。心臓バクバクの瞬間だね。ちなみに予約が必要だったのか、会員登録が必要だったのか、6年前のことだから記憶が定かでない。

たしか、男性は金がかかって、女性はタダなんだよ。男が席で待ってると女性がやって来る。そんで会話スタート。「あ、この男、ないな」と思われると、「チェンジ」といって女性が席を離れてく。んで、別の女性が来る。そんなシステム。

僕と杉山くんは席に着いた。店内は薄暗い。杉山くんはハイボール。酒の飲めない僕はウーロン茶。しばらくすると3人組の女性陣が僕らの席にやって来た!

女性陣「はじめまして~、こんばんわ~」

僕ら「あ、はじめまして(ボソッ)」

女性A「お二人はお仕事は何をされてるんですか~?」

杉山くん「介護職です」

高橋「ニートです」

女性陣の顔が青ざめていくのがわかった。

結果。2分でチェンジされた。これが伝説の「高橋&杉山、相席屋で2分でチェンジされる事件」だ。メモっといたほうがいいよ。テストに出るから。

それからしばらく女性はやって来なかった。杉山くんは落ち込み、ハイボールがぶ飲み。べろべろ状態。僕は次に職業を聞かれたら「外科医」と答えようと決めた。

次にやって来たのは、50代と思われる女性3人組。杉山くんはハイボールでつぶれてる。僕が頑張るしかなかった。

喋ったよ。そりゃあ喋った。一生懸命に喋った。結果、空回り。「あなたの夢は何ですか?」などと訳のわからない質問をして女性陣を困らせた。

しかし、このままじゃあ帰れない。何か成果を得なくては。僕は一世一代の勇気を振り絞り、「連絡先、教えてください!!」と叫んだ。

結果。鼻で笑われた。女性陣は帰っていったよ。これが俗に言う「高橋、相席屋で鼻で笑われ撃沈事件」ね。これもテストに出る。覚えとくように。

僕たちは相席屋をあとにした。何の成果も得られぬまま。泣きそうな顔で。そして、本日2回目の吉野家に入り、本日2回目の牛丼を食べ、肩を組みながら帰った。星の綺麗な夜だった!