[2025/08/04]

『拝啓、16の君へ』


「学校」という場所で良い思いをしたことがない。
人生を変えてやる、という意気込みで入学した高校は10日で行かなくなったし。
その10日間で女子と話した合計時間は6秒だし。


女子「あのさ、次の授業って何だっけ?」
高橋「こ、国語」


この6秒だけである。6秒っていったらアータ、ウサインボルトの100mのタイムより短いのである。
んで、この唯一の6秒の数日後、僕は学校に行かなくなった。行かなくなった「きっかけ」もハッキリ覚えている。


僕は高校にスクールバスで通っていた。その帰り道である。座席に座っている僕のすぐそばで同じクラスの女子2人が何やら盛り上がっていた。耳をすまして聴いてみると、「ウチのクラスの男子で誰がまともか」という議題である。


僕はワクワクして聴いていた。絶対に自分の名前が呼ばれるだろう、と。なんだかんだ、俺はイケてるに違いない、と。


女子の会話に耳をすます。


女子A「え~、坂本くんでしょ~、木村くんでしょ~、それから、山下くんでしょ~」


ワクワク、ドキドキ。


女子B「あとは、小林くんとぉ~、吉田くん。それくらいじゃね?」


※※※


僕の名前は呼ばれなかった。この瞬間、僕は僕の頭の中で何かが「ブチッ!」と切れる音を聞いたよ。うん。たしかに聞いた。
そして、思った。そうだ、学校やめよう(そうだ京都、行こうのノリで)


ここから僕の長い長い引きコモラー生活が始まったのである!……って、今回はそんな話はどーでもよくて。


あれから15年。僕は今、懲りずにまた学校に通っている。学校というか、スクール。介護の資格を取るため。週に2回。電車に乗って。31才の学生である。


「スクール」っていうくらいだからさ、やっぱり期待するじゃん。ピチピチのレイディーたちに囲まれ、シーブリーズの香りに包まれ、消しゴムの貸し借りをしたり、ノートを写させてもらったり、盗んだバイクで走り出したり、視聴覚室でかくれんぼしたり……そんな学生生活をさ。


だけどね、登校初日、教室のドアを開けた僕は崩れ落ちたよ。クラスメイトの8割はおっさん。推定年齢60オーバー。部屋が暑いよ。暑いを通り越して、むさ苦しいよ。


そんな、むさ苦しいおっさん達と手を取り合いながら、週に2回、勉強しています。大体9時か10時くらいから始まって、17時くらいまで。割とガッツリ。


疲れる。つまんない。面倒くさい。16才の僕だったら、放り出してたかもしれん。でも、31才の僕は休まず通っている。


「15年間で俺って何にも変わんないな」と思ってたけど、もしかしたら、ほんの何ミリかは進めているのかな?そうだといいな。


そして、これからも進んでいきたい。どこへ?未来へ。
毎日、上がったり下がったり、もがいてばかりだけど、いつか心から「やっとハッピー」と言える日が来るまで、足を進めたい所存なのであります。